2021/04/03

公開研究セミナー「パンデミックとアメリカの大学」を開催しました

 3月22日、オンラインでの公開研究セミナー「パンデミックとアメリカの大学」を開催しました(主催:教育学研究科学校教育高度化・効果検証センター、共催:大学経営・政策研究センター)。

当日は約100名の方々にご参加いただきました。ご参加いただいた皆様に御礼を申し上げます。

コロナ禍以降、アメリカの大学はその存立基盤が脅かされるほどの大きな影響を受けてきました。もちろん、日本や他国でも、大学そしてその教育、何より大学に通う学生たちは、コロナ禍で甚大な影響を受けているわけですが、アメリカの大学が受けたダメージはその比ではありません。それはいったいなぜなのか、という疑問から我々のプロジェクトは始まりました。

日米を比べた場合、社会全般が受けた被害の程度は大きく異なり、それがそのまま大学へのダメージにつながった面もあります。一方、そこにはアメリカに特殊な事情も多分に反映されています。研究グループで議論する中で、次第に認識するようになったのは、COVID-19による影響を探ることは、現在起こっている動向を理解することを超えて、アメリカ高等教育の構造的特質を探ることにつながるのではないかということでした。

日本では、パンデミックによってアメリカの大学の優位が崩れ、日本の地位が相対的に上がるのではないかといった観測も一部で語られています。それには首肯しうる面もありますが、競争相手の苦境を座して眺めるのみでよいのか、またコロナ禍が過ぎ去った時、本当に日本は優位な立場に立っていられるのか、より主体的かつ真剣に考える必要があるでしょう。

また、この機会に、アメリカの大学の特質を探り、そこから何が抽出されるかを意識しつつ、ポストコロナの大学を展望する思考がより重要であると思います。

セミナーでは共同研究者による以下の報告を行いました。近々、東京大学教育学研究科紀要に投稿した我々の第一次報告が公開されますので、詳しい内容はそちらをご覧下さい。また、今回の報告は、さらに角度を変えて、5月下旬の日本高等教育学会大会でも発表する予定です。

福留東土(東京大学)「パンデミックの国際比較から何が見えるか」

長沢誠(埼玉大学)「COVID-19が映し出す大学の価値と脆弱性」

川村真理(政策研究大学院大学)「COVID-19による高等教育機関の経済損失と経済支援への影響」

佐々木直子(電気通信大学)「COVID-19による外国人留学生の受入れへの影響とその動向」

蝶慎一(広島大学)「COVID-19による学寮を巡る影響とその動向」


■セミナーの元となった論文(近日、オンライン公開予定)

福留東土・長沢誠・川村真理・佐々木直子・蝶慎一(2021)「COVID-19がアメリカの大学にもたらした影響―2020年上半期の報告―」『東京大学大学院教育学研究科紀要』第60巻。






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