2021/07/23

アメリカの学長選考について読売新聞の取材を受けました

昨年来、日本の国立大学の総長・学長選考が度々議論を呼んでいることに関係し、アメリカの学長選考の実態について、読売新聞の取材を受けました。

7月15日の朝刊に、「旭川医大 パワハラ認定…国立大学長に権限集中 ひずみ」と題する記事の中で、海外の学長選考を説明する記事として掲載されました。以下は読売新聞オンラインへのリンクです。

「旭川医大 パワハラ認定…国立大学長に権限集中 ひずみ」

私のコメントはアメリカの動向に関連して掲載されています。

オンラインインタビューでは記者の伊藤史彦さんといろいろな議論ができ、有意義な時間を過ごしました。

2021/07/09

文系大学院に関する講演をしました

6月18日に立命館大学大学院キャリアパス推進室のご依頼を受け、「人社系大学院 その先に見えるものは?ー大学院進学の意義や価値を考えるー」というオンラインセミナーで講演をしました。

講演は「文系大学院の意義と効用をさぐる」と題して行いました。講演では、大学院で学んだ者として、また大学院教育について研究する者として、そして大学院で教える教師としてという3つの立場から話をしました。これまで、大学院について考える際、無意識にこの3つの立場が重なり合う形で自身の思考に影響を及ぼしてきたように思います。

加えて、私自身も分担執筆した吉田文編『文系大学院をめぐるトリレンマー大学院・修了者・労働市場をめぐる国際比較』(玉川大学出版部、2020年)の知見に依拠しながら話をしました。

文系大学院を出て大学等の研究職以外の進路を目指す場合、進路データや企業の採用行動などをみると、やはり理系に比べて厳しい現状があるのは否めません。しかし、徐々にではあれ、大学院側にも採用する側にも、変化の兆しが見えているように思います。

その上で、文系大学院の意義と効用として、①専門を中心とした学習プロセスと人間関係の形成、②修士論文という探究プロジェクトの2つを挙げ、それらが就職後の仕事にもプラスに活きるのではないかという話をしました。また、大学院生による能力の発揮の仕方が多様であることに触れました。これは、私が教師として学生たちから常日頃教えられていることです。

今回のセミナーでは、採用側の企業の方や立命館の院生の方も登壇されましたので、講演の最後には、文系大学院に関心を持つ人たちが対話することで、大学院、学生、雇用者三者の関係を、トリレンマから好循環へ変えていきたいということを話しました。

私はこれまで大学院についていろんなところで話をする機会がありましたが、大学院を学術研究の対象に据えて、研究者を相手に話すことが多かったです。今回は文系大学院への進学を考える大学生が主なオーディエンスということで、どのように話そうか、直前まで試行錯誤しましたが、参加の皆さんの反応を見ると、結果的にある程度参考になる話ができたようでホッとしています。

私にとっても新たな視点を得ることができ、自分がこれまで行ってきた研究や、自身の大学院での教育に対して目を開かせてもらう機会となりました。

貴重な機会を与えて下さった立命館大学の皆様に感謝を申し上げます。




2021/07/06

比較教育学会で研究発表をしました

6月25~27日の3日間にわたって、日本比較教育学会の第57回大会がオンラインで開催されました。5月から6月にかけては、所属する学会の年次大会が相次いで開催されるため、例年だと出張が多い時期なのですが、今年はすべてオンラインの開催となり、移動が必要ない分、参加しやすかったですが、やはり友人たちと直接顔を合わせられないのは寂しさが残りました。

比較教育学会は昨年の大会が中止となったため、2年ぶりの大会となりました。

私は自由研究発表で、「アメリカ合衆国における教養教育理念に関する考察」と題する発表を行いました。日本の教養教育の現状を踏まえつつ、アメリカとの比較の視点から最近考えていることを発表しました。参加者からいくつか質問を受け、私自身にとっても教養教育理念について理解を深めるよい機会になりました。

また、初日のラウンドテーブルでは、研究委員会企画の「比較教育学を学ぶ人のためのアカデミック・キャリアシリーズ Ⅲ―比較教育学の実践・成果をどう発信するか―」に研究委員の一人として参加しました。新旧研究委員の森下稔・鴨川明子・市川桂氏が編集された『比較教育学のアカデミック・キャリアー比較教育学を学ぶ人の多様な生き方・働き方』(東信堂、2021年刊)をベースとする内容でした。学会の研究委員会では、昨年度のコロナ禍による大会中止を受けて、若手有志によるオンラインでの研究発表会を企画するなど、乾美紀委員長のもとで、若手支援の企画を検討してきました。ラウンドテーブルに続いて、「若手研究者交流会」が開かれ、私も続けて参加しました。

交流会では、研究キャリアに関する話を求められ、私がいかに数々の失敗と紆余曲折を経て今に至っているかについて短い話をしました。「東大教授」といってもいろんな人がいるのが世の中の面白いところです。私自身、反面教師の話はとても役に立つと考えており、そのひとつのケースとして参考になればと思い、話をしました。

また、比較教育学会では今年度から若手交流委員会(鴨川明子委員長)を立ち上げることが今回の大会で認められました。研究分野における後継者の育成は学会にとって重要な使命であり、研究委員としてこれからできることを協力して手掛けていきたいと思います。

大会最終日の課題研究では、研究委員会の企画する「学校に行けない子どもたち(OOSCY)とは」に参加しました。アセアン諸国の5カ国の事例を聞きながら、貧困を原因とする子供たちだけではなく、外国籍・無国籍や少数民族の子どもにOOSCYが多いことが分かり、私にとって重要な勉強の機会となりました。ゆえに、国民統合とも関係する問題としてOOSCYを捉える必要があると感じました。登壇者の皆様には私からの質問にも答えていただき、理解を深めることができました。ありがとうございました。

2日間の自由研究発表ではいろんな部会で発表を聴きましたが、世界の教育についてさまざまな角度から取り上げた有意義な発表が多く、忙しくも楽しい時間を過ごしました。

大会を主催いただいた筑波大学の関係の皆様、開催に当たって様々なご配慮をいただいた学会事務局の皆様に感謝を申し上げます。