2021/11/28

大学における多様性と包摂性について記事が掲載されました

「研究から探究へ発想を転換し多様性と包摂性を備えた高等教育を」というタイトルで、『先端教育』12月にインタビュー記事が掲載されました。

 『先端教育』12月号




2021/11/24

私学研修福祉会で講演をしました

11月5日、私学研修福祉会による 第43回「私立大学の教育・研究充実に関する研究会」で講演をしました。

コロナ禍に伴う海外動向の報告を依頼され、「コロナ禍とアメリカの大学 」というタイトルで、現在進めている共同研究の成果について話をしました。

コロナ禍の中、アメリカでは日本とは比べものにならない甚大な影響が大学に及んでいます。日本よりも学生数の減少幅が大きく、とりわけ留学生が大幅に減少していること、キャンパスサービス等の付帯事業収入の比率が大きくキャンパス活動の停滞による影響が出ていることなどにより、特に大学財務への影響が大きく、教職員のレイオフが一部で進んでいます。

学生の進学行動という観点から日米比較を行うと、日本の大学進学者はコロナ禍であっても大学進学を遅らせたり、控えたりすることはなく、私立大学の併願など受験動向に一部変動はあったものの、授業料を収める大学生数の減少が大きく生じることはありませんでした。これに対してアメリカでは、経済状況に応じて進学を控えたり、大学入学の権利を確保した上でギャップイヤーを取ったりした学生が多く出ました。コロナ禍で生じた現象を通して、アメリカでは大学進学・就学について学生が実質的な選択肢を持っていること、日本は学生の選択肢が限られている分、大学としては入学者を安定して確保しやすいことに改めて気付かされました。

アメリカでの学生数減少は機関により一律ではなく、逆に学生数が増えている大学もあり、大学類型間の格差拡大が進行しています。また、州・地域の支持政党の違いによって、社会と大学によるコロナ対策が異なっており、大学ガバナンスのあり方を巡る問題も生じています。

学士課程学生のキャンパスライフを重視するアメリカでは、2021年度からは対面授業やキャンパス活動の再開が本格的に進んでいます。一部大学では感染の再拡大も起きており、まだまだ先行きは不透明ですが、2020年と2021年とでかなり活動の様相は異なります。フットボールをはじめとする大学スポーツもフルキャパシティで開催されています。今後、ポストコロナのアメリカの大学モデルがどのようなものとなっていくのかが注目されます。

貴重な機会を下さった津田塾大学長の高橋裕子先生、東京女子大学長の茂里一紘先生に御礼を申し上げます。

2021/11/22

大学入試センターのシンポジウムで発表をしました

11月14日(日)大学入試センターが主催するシンポジウム「COVID-19の災禍と世界の大学入試」がオンラインで開催されました。

私は、大経コース4期生の川村真理さん(文部科学省科学技術・学術政策研究所上席研究官)と共同で「コロナ禍で揺れるアメリカの大学入学者選抜」という研究発表を行いました。

アメリカではもともと、個別大学による独自試験は行われず、標準テストのスコアに加えて、高校の成績や履修記録、課外活動、推薦状、面接など、多様な指標を組み合わせて選抜を行う仕組みが取られてきました。しかし、コロナ禍で標準テストの受験が困難となったことから、テスト受験を必須としない”Test Optional”、あるいは”Test Blind”と呼ばれる選抜が広がっています。標準テストの利用についてはコロナ禍以前から懐疑的な見方が強くありました。それに対して、テストの意義を主張する論調もあり、議論となってきました。

テスト受験が任意となったこともあり、2021年度入学では選抜性の高い大学への志願者数が過去最多を記録しています。コロナ禍でキャンパスでの活動が難しくなったことから、2020年度入学者は入学を遅らせるギャップイヤーの選択をした学生が多く出たため、2021年度は入学許可者を抑える動きもありました。一方、地域の高等教育ニーズを受け止めてきたコミュニティ・カレッジではコロナ禍の影響で入学者数が大きく減少しており、大学類型間の格差拡大が懸念されるところです。

今後数年間は現在主流となっている”Test Optional”が続くものと思われますが、その後の見通しはまだ不透明です。アメリカの動向は、入学者を選抜する上で試験やその他の指標をどう活用するのかという点について、中等教育の成果をどう評価するのか、あるいは高等教育の目的をどう捉えるのかといった観点から示唆を投げ掛けているように感じています。

シンポジウムでは、イギリス、フィンランド、韓国、日本の動向が報告され、各国独自の対応がなされていることが分かりました。選抜および試験のあり方には、各国の中等教育と高等教育の接続の仕方や、各国の試験文化のあり方が反映されていることを改めて認識しました。

貴重な勉強の機会をいただいた大学入試センターの方々、お声掛け下さった東北大学の倉元直樹先生に御礼を申し上げます。

今回のシンポジウムの内容は、東北大学の入試研究シリーズの一環として近く刊行される予定です。

大学入試センター・シンポジウム2021