2023/12/30

大学教育学会課題研究集会で報告をしました

2023年11月11・12日に金沢・北陸大学で、大学教育学会の課題研究集会が開催されました。

私が研究代表を務める学会課題研究「大学教育・経営人材の育成とプログラム開発に関する研究」は今年度で3年間の最終年度を迎えました。課題研究集会で過去2回、報告の機会を設けていただき、今回は課題研究としての最後の報告の機会でした。

これまでの2回はオンラインでの開催だったため、対面での報告は最後にして初めてであり、参加者の皆様から直接いろいろなコメントをいただくことができました。まだまだ、考えたいこと、取り組むべきことは山積していることを痛感しました。しかし、共同研究者の皆様、コメンテーターをお願いした寺崎昌男先生、担当理事をお願いした鳥居朋子先生の多大なるご協力のおかげで、課題研究としての役割を一定程度果たすことができたのではないかと考えています。

今後は今回の報告内容を大学教育学会誌にまとめつつ、プロジェクト立ち上げから4年間の成果を振り返り、これからの課題を探る作業を行いたいと思います。


大学教育学会2023年度 課題研究集会シンポジウムⅡ
「大学教育・経営人材の育成とプログラム開発に関する研究」
プログラム

司会:蝶慎一(香川大学)

1. 福留 東土(東京大学)「シンポジウムⅡの趣旨説明」 

2. 戸村理(東北大学)「大学教育・経営人材の育成プログラムの設計理念と実践」

3. 井芹俊太郎(神田外語大学)「大学教育・経営人材育成プログラムを考えるための新たな大学院修了生調査の検討」

4. 松村彩子(名古屋大学)「大学教育・経営人材のアイデンティティ形成とキャリア」

5. 福留東土(東京大学)「高等教育分野の研究・教育組織としての大学院:アメリカから得られる示唆と日本の課題」

6.鳥居朋子(立命館大学)「指定討論:プログラム開発における評価フェーズへのまなざし」

2023/12/28

第4回次世代育成教育フォーラムで総括コメントをしました

 12月9日(土)、東京大学生産技術研究所の次世代育成オフィス(ONG)主催の第4回次世代育成教育フォーラム「未来社会をデザインできる人材の育成~初等中等教育における探究活動の成果とこれから~」が開催されました。

第4回次世代育成教育フォーラム「未来社会をデザインできる人材の育成~初等中等教育における探究活動の成果とこれから~」


私は数年前からONGの先生方と交流させていただいており、ONGが主催するイベントに対面で出席するのは3度目でした。

当日は、学校現場をはじめ、初等中等教育で取り組まれている探究型・協働型、あるいは教科横断型の学習について、さまざまな報告が行われました。登壇者も、教育委員会、アカデミア、官庁、民間企業など多彩であり、さまざまな観点に立った報告と議論が交わされました。

私は会の最後に、総括のコメントを依頼されました。全体を通して、たいへん充実した、幅広い議論だったため、会の「総括」をすることはとても叶いませんでしたが、主に3つの観点からコメントしました。

①主体的・対話的な学びは、これまで「客観的」な知識、すなわち教科書に書かれてある、いわば安定的な知識を軸に行われてきた教育現場に、自己や他者の主観的・経験的知識を持ち込むという意味で、教育の大きな転換であるといえる。

②探究型・協働型学習の取組が様々な場所で展開されるようになっているが、そこから取り残されている人たちがいないかを検証する必要がある。様々な生き辛さを抱えている人たちの存在をも包摂できるような取組が進むことが重要ではないか。多様な状況にある人々の立場を尊重すること自体に意味があるし、同時に、そういった立場の人々は多くの人々の世界観を転換させてくれる存在でもある。

③学習者が中心に置かれた学びの場を構築することが重要であり、学習者とは主に子どもたちを指す。しかし、教師や学びの過程に関わる様々な人々も同じく学習者である。教師たちが新しい教育的取組に楽しんでチャレンジできるような教育風土の形成が重要である。探究型・協働型学習は、上から教師が教え込むのではない、いわば民主的な学びの場の形成につながる。同時に、新しい教育方法を実践する際には、教師の側に不安や悩みが付きものである。主体的に試行錯誤を楽しめるような風土の中で、新たな教育実践が進んでいくことを期待したい。

今後とも東大内外の関係の皆様と連携・協力しながら、高等教育との接続を含めて、有意義な教育の場の形成に力を注ぎたいと思います。



2023/12/27

カシオ科学振興財団の研究助成に採択されました

 公益財団法人カシオ科学振興財団の研究助成に採択されました。

「日米大学連携によるグローバル・シティズンシップ育成の理論的研究と開発」というテーマで、スタンフォード大学との関係を中心に進めている国際連携について助成いただけることになりました。

カシオ科学振興財団第41回(令和5年度)研究助成一覧

12月1日に研究助成金贈呈式に出席しました。旧知の方がおり、研究分野が近い方々を中心に話をすることができました。

第41回(令和5年度)研究助成金贈呈式

この機会を活かして、研究を進展させるとともに、研究ネットワークの拡充に取り組みたいと思います。



2023/06/05

大学教育学会で研究発表を行いました

6月3日・4日(土・日)に大学教育学会の第45回大会が大阪大学で開催されました。台風による交通の乱れの影響で、会場に時間通りに到着できない人がかなりいました。大会自体は無事に開催され、私は、学会課題研究のラウンドテーブルを開催し、また自由研究発表を行いました。

企画したラウンドテーブル「大学教育・経営人材と育成プログラム」は、土曜午前の開催で、台風の影響もあり、参加者は多くありませんでしたが、登壇者の論点提起と参加者の積極的なコミットメントのおかげで、楽しい議論を交わすことができました。話題提供いただいた木村弘志さん、水野(林)貴子さん、松村彩子さん、中世古貴彦さん、お疲れさまでした。ありがとうございました。

翌日曜の自由研究発表では、「学士課程教育(3)」の部会で「包摂性と社会的公正を目指す学士課程教育―カリフォルニア大学バークレー校のアメリカ文化プログラムー」と題する発表を行いました。近年の大学教育学会では必ずしも研究の多くない、大学教育の内容論に踏み込んだ発表だったため、反響が少ないかもという不安がありましたが、幸い聴衆も多く、発表後に多くのコメント・質問を受けました。

自由研究発表では、同じ部会で他に3つの研究発表が行われました。学士課程教育、教養教育、学生支援を考える上でいずれも興味深く、有意義な内容でした。また、その前の時間に司会をお引き受けした「学士課程教育(2)」の部会では、学生調査を元にした5つの発表が行われ、いずれも興味深く聴き入りました。特に、入学後初期段階の学生の状態を把握することで、その後の学生のつまづきを予測し、成功の可能性を高めようとする問題意識が高まっていることを強く感じました。

午前・午後ともに、短い部会の時間では議論し尽くせない内容があり、議論を継続する機会を持ちたい衝動に駆られました。

以下、今回私が聴いた研究発表を挙げておきます。(〇は発表者)


部会6 学士課程教育(2)

「学生の特徴と教養教育・専門教育における学びの関連」◯岡田有司(東京都立大学)、山田剛史(関西大学)、半澤礼之(北海道教育大学釧路校)、家島明彦(大阪大学)

「心理的安全性と教養教育・専門教育における学びの関連」◯山田剛史(関西大学)、半澤礼之(北海道教育大学)、家島明彦(大阪大学)、岡田有司(東京都立大学)

「大学 3 年生の学習成果(学業成績・汎用的技能)に関連する入学時の要因の検討」◯澤田忠幸(石川県立大学)、垣花渉(石川県立看護大学)

「大学入学時のセルフマネジメントの行動意図による学業成果の予測」◯西口利文(大阪産業大学)

「社会科学系学部に所属する学生の学習意識・行動-ボーダーフリー大学生に着目して-」◯宇田響(くらしき作陽大学)


部会15 学士課程教育(3)

「大学における一般教育・教養教育の理念等整理の試み-「 IDE― 現代の高等教育」の内容分析を通して-」〇上畠洋佑(新潟大学)

「AAC&U の LEAP イニシアチブにおける Capstone Experience と Undergraduate Research の目的と方法-日本の卒業研究との比較の観点からの考察-」〇中島夏子(東北工業大学)

「日本の大学における Tinto による学業継続モデルの適用可能性に関する検討」〇小湊卓夫(九州大学)、田中秀典(宮崎大学 、非会員 )、藤原宏司(山形大学 、非会員)


広島大学の後輩で今回大会運営スタッフの一員だった陳麗蘭先生(大阪大学特任助教)が私の発表の写真を撮って下さいました。ありがとうございました!



2023/05/31

大学教育学会の大会でラウンドテーブルを開催します

 6月3日・4日に大阪大学で大学教育学会の第45回大会が開催されます。

私は学会の課題研究に採択されている研究プロジェクトでラウンドテーブルを開催します。大学職員を中心とする大学関係の人材を育成と、それに資する大学院教育のあり方について議論します。関心のある方はぜひご参加下さい。

また、自由研究発表では、「包摂性と社会的公正を目指す学士課程教育 ―カリフォルニア大学バークレー校のアメリカ文化プログラムー」という研究発表を行います。


以下、ラウンドテーブルについて大会案内からの抜粋です。

大学教育学会第45回大会


テーブル19  6月3日(土)10:00~12:00

【課題研究】大学教育・経営人材と育成プログラム

会 場:U2棟 U2-212教室

企画者:福留東土(東京大学)、中世古貴彦(九州産業大学)、水野貴子(東京大学)、木村弘志(一橋大学)、松村彩子(名古屋大学)

趣 旨:学会課題研究「大学教育・経営人材の育成とプログラム開発に関する研究」は2023年度が最終年度となる。プロジェクトではこれまでの2年間で、主に以下の5つの観点からプロジェクトテーマを巡る議論を行ってきた。 ①大学院プログラム学習者の視点 ②大学院プログラム教育者の視点 ③大学職員研究の視点 ④大学経営研究の視点 ⑤国際比較の視点 本ラウンドテーブルでは2年間の活動を通して得られた知見を課題研究メンバーが提示する。その上で実務者・研究者の立場からコメントを行い、参加者との議論を行う。初めて参加する人が理解しやすいよう、知見のエッセンスを集約して提示する。本テーマに関心のある多くの会員の参加を歓迎する。 

2023/05/27

大学経営・政策コースに関する記事の紹介

『IDE・現代の高等教育』の2022年12月号に、大学経営・政策コースに関する記事を書きました。コースについて知っていただく上で参考になると思います。短いので、全文を掲載します。





2023/05/22

コース説明会と同窓会総会を開催しました

5月20日(土)、大学経営・政策コース志願者向けのコース説明会を開催しました。

4年ぶりに本郷キャンパスで対面で開催し、オンライン配信も行うハイフレックス方式ではじめて開催しました。参加いただいた皆さん、運営に協力してくれたコース修了生・在学生の皆さん、ありがとうございました。

同日はコースの同窓会組織である大学経営・政策フォーラムの総会と懇親会が開催されました。コロナ前はコース説明会に合わせて開催していましたので、こちらも久しぶりの対面開催でした。久しぶりに直接会う修了生の人たちも多く、楽しいひと時を過ごしました。

コース説明会については、例年、教育学研究科全体の説明会が終わった後に開催していますが、今年はコースのスケジュールの関係で前倒しして行うこととなりました。参加できなかった方々のために、昨年度のオンライン開催時の説明会の録画ビデオをご提供します。以下のリンク先からご覧下さい。

コース説明会(2022年度版)録画

2023/05/20

国際シンポジウム「世界の高等教育研究」を開催しました

日本高等教育学会の創設25周年記念行事の一環として、5月13日に「世界の高等教育研究」“Higher Education Research Around the World”と題した国際シンポジウムをオンラインで開催しました。

当日は、米国、欧州、アジアの各国・地域の高等教育研究を推進する3学会にそれぞれの活動の現状について報告いただき、日本高等教育学会長の小林雅之教授にも講演いただきました。

日英の同時通訳を入れ、学会内外から126名の方々に参加いただきました。

3つのタイムゾーンをつなぐため、日本時間の午後8時から10時半という遅い時間の開催となりましたが、多くの方々に参加いただいたことを御礼申し上げます。

今後の高等教育研究の国際的展開に少しでも寄与することができれば幸いです。講演いただいた皆様、コメントいただいた杉本和弘教授(東北大学)に御礼を申し上げます。

日本高等教育学会創設25周年記念国際シンポジウム




2023/05/18

五月祭の公開討論に登壇しました

(長く更新をさぼっていたので、少しずつ再開します。)


5月13・14日の両日、本郷キャンパスで五月祭が開催されました。入構制限なしの対面開催は2019年以来でした。

五月祭委員会企画の「公開討論〜高等教育のあり方〜」に同僚の先生たちと登壇しました。緊張しましたが、楽しく、また勉強になる時間になりました。

公開討論〜高等教育のあり方〜第96期五月祭常任委員会


また、大経コース博士課程の佐藤寛也さんが「五月祭百周年」の展示企画を開催しました。約900名もの来場があったとの盛況ぶりだったそうで、私も嬉しく思います。

五月祭百年史:五月祭百年を祝う会

YouTube「五月祭百年史」再生リスト