2021/11/24

私学研修福祉会で講演をしました

11月5日、私学研修福祉会による 第43回「私立大学の教育・研究充実に関する研究会」で講演をしました。

コロナ禍に伴う海外動向の報告を依頼され、「コロナ禍とアメリカの大学 」というタイトルで、現在進めている共同研究の成果について話をしました。

コロナ禍の中、アメリカでは日本とは比べものにならない甚大な影響が大学に及んでいます。日本よりも学生数の減少幅が大きく、とりわけ留学生が大幅に減少していること、キャンパスサービス等の付帯事業収入の比率が大きくキャンパス活動の停滞による影響が出ていることなどにより、特に大学財務への影響が大きく、教職員のレイオフが一部で進んでいます。

学生の進学行動という観点から日米比較を行うと、日本の大学進学者はコロナ禍であっても大学進学を遅らせたり、控えたりすることはなく、私立大学の併願など受験動向に一部変動はあったものの、授業料を収める大学生数の減少が大きく生じることはありませんでした。これに対してアメリカでは、経済状況に応じて進学を控えたり、大学入学の権利を確保した上でギャップイヤーを取ったりした学生が多く出ました。コロナ禍で生じた現象を通して、アメリカでは大学進学・就学について学生が実質的な選択肢を持っていること、日本は学生の選択肢が限られている分、大学としては入学者を安定して確保しやすいことに改めて気付かされました。

アメリカでの学生数減少は機関により一律ではなく、逆に学生数が増えている大学もあり、大学類型間の格差拡大が進行しています。また、州・地域の支持政党の違いによって、社会と大学によるコロナ対策が異なっており、大学ガバナンスのあり方を巡る問題も生じています。

学士課程学生のキャンパスライフを重視するアメリカでは、2021年度からは対面授業やキャンパス活動の再開が本格的に進んでいます。一部大学では感染の再拡大も起きており、まだまだ先行きは不透明ですが、2020年と2021年とでかなり活動の様相は異なります。フットボールをはじめとする大学スポーツもフルキャパシティで開催されています。今後、ポストコロナのアメリカの大学モデルがどのようなものとなっていくのかが注目されます。

貴重な機会を下さった津田塾大学長の高橋裕子先生、東京女子大学長の茂里一紘先生に御礼を申し上げます。

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